相続人申告登記とは
1 総論
相続人申告登記とは、相続登記の義務化に伴い、相続人が多すぎて登記するとことが困難な場合や、相続人間に争いが生じていて相続登記をすることができない場合に、義務を履行するために簡易的に登記を行うことを認めた制度をいいます。
2 相続登記の義務化
令和3年の民法改正で、相続登記が義務化されました。
そして、この相続登記の義務化に伴い、相続登記を行わない場合には10万円の過料が課されることになりました。
しかし、以下のような場合には、相続登記を行うことが困難であるにもかかわらず、過料が課されてしまうため、これを避けるために相続人申告登記が新設されたのです。
① 相続人が多すぎて登記するとことが困難な場合
② 相続人間に争いが生じていて相続登記をすることができない場合
3 メリット
⑴ 過料が課されなくなる
相続人申告登記を行うことで、相続登記の義務化の趣旨である「相続人が誰かを確定する」という点を満たすことができるため、相続登記の義務を履行することになります。
したがって、相続人申告登記を行うことで、10万円の過料を免れることができます。
⑵ 相続人が単独で申請することができる
通常の相続登記では、相続人全員の印鑑証明書や遺産分割協議書が必要となりますが、相続人申告登記ではこれらの書類を準備する必要がありません。
そのため、通常の相続登記よりも簡易的な手続きで登記をすることができます。
もっとも、この場合であっても、相続人の関係を示すための戸籍謄本は必要であり、これを収集するのが大変な場合があるので、お困りの場合には、専門家に相談することが重要でしょう。
4 デメリット
⑴ 不動産を売却することや抵当権の設定をすることができない
相続人申告登記は、相続登記を行う義務を履行するために行う登記申請ですので、不動産の売却等を行うことはできません。
そのため、不動産を売却したり、抵当権を設定したりする場合には、他の相続人との間で遺産分割協議書を作成して相続登記を行う必要があるので注意が必要です。
⑵ 登記簿謄本に住所や氏名が公開される
相続人申告登記にも、氏名や住所が登記されるため、個人情報を公示されてしまうリスクがあるといえます。
5 まとめ
以上、相続人申告登記のメリット、デメリットをご紹介してきました。
弁護士法人心では、相続登記に関する業務を多く扱っているため、少しでもお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせください。